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Now and then
ショートメールに送られてきたのは「元気にしてる? 良かったら飲みにいかない?」という短い文だった。
一瞬、誰かと間違えて送ったのかとも思ったけれども、その後のやりとりで私を誘ったのだと明確にわかり、飲みに行く約束をした。
「久しぶり、元気?」
待ち合わせの場所に現れた志乃ちゃんは、当時よりもさらに大人っぽくなっていた。長かった髪は肩につくくらいの長さになっていて、毛先がふんわりカールしていてエレガントに揺れる。
綺麗なネイルは変わらずで、きちんとつけられたマスカラ、手入れの行き届いた肌は白くて、淡く発光しているように見える。
「志乃ちゃん、また綺麗になったね」
「ほんと? ありがとう」
嬉しそうに微笑む志乃ちゃんは、あのときの、切ない微笑みを湛えた志乃ちゃんとは違っていた。ああ、きっといい恋をしているんだ、と感じた。
おしゃれなイタリアン居酒屋に入り、取り敢えず、とグラスワインを注文すると同時にお互いに目を見合わせた。
「藍ちゃんとお酒を飲む日がくるなんてね」
「ね! 信じられないよ」
「何歳になったんだっけ」
「二十三だよ」
「そっか、あれから五年か……」
志乃ちゃんは感慨深い、というような顔をして「大人になった藍ちゃんに」とグラスを合わせてきた。
「仕事はどう?」
「まぁまぁかな。一年経って後輩もできたけど、指導と自分の仕事で今は手一杯」
そんな近況を話しつつ志乃ちゃんは? と振ると「実は結婚することになってさ」と言った。
一瞬、あのキスマークを思い出した。まさかあの不倫の彼じゃ、ないよね?
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