おあずけなんて酷すぎる

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おあずけなんて酷すぎる

 アヴィレックス殿下の衝撃の告白から3日。今日は昼休みに殿下から例のお話を聞ける約束なので私はかなりるんるんで待ち合わせである学園のガゼボへと足を運んだ。 なにせ王子と公爵令嬢の婚約解消、そして王子が新たな恋人(男)と円満に結ばれるための相談なので城や公爵家でするわけにもいかない。各親たちに知られない為にも学園でこっそり打ち合わせするしかないのだ。 まぁ、私とアヴィレックス殿下が婚約者同士なのはみんなが知っている事なので別にこっそり会わなくても特に問題はないとは思うかも知れないが、情報漏洩しないためには細心の注意が必要だしね! 「むふふ……のわっ!?」 これからどんな生BLトークが聞けるのか楽しみでスキップしそうになっていた時、廊下の曲がり角で誰かとぶつかり尻餅をついてしまった。こんなときに「きゃあ」なんて可愛いらしい叫び声が出てこない所に乙女として終わってる気もするが、出てこないものは出てこないのだからしょうがない。 おっと私のおっさんくさい叫び声など今はどうでもよかった。と慌てて反対側の人物に目をやった。 そこには私とぶつかった反動で同じく尻餅をついている美少年がひとり。同じようにぶつかって、同じように倒れているのになんとも漂う色気を醸し出しているその美少年の姿に私は言葉を失い、目を見開いてしまった。 私は感動していたのだ。その独特な濃いオレンジ色の長い巻き毛は片目を隠すようにふわりと靡き、長い睫毛の下に隠されたダークグリーンの瞳のなんと美しいことか。 こんなん、絶対総受けですやん……! 「あ、あの……?」 はっ!しまった、脳内BL劇場が盛大に始まるところだった。 先に立ち上がった美少年が手を差し出してくれたので、その手に捕まり立ち上がる。 「私がよそ見をしていたせいでごめんなさい。お怪我はありませんか?」 「……ええ、大丈夫です。あの、失礼ですが、あなたはアヴィレックス殿下の婚約者であるご令嬢ですか?」 「え?ああ、(もうすぐ婚約解消するけど)そうですわよ。それがなにかーーーー」 ぷす。 と、首筋にチクリとした痛みが走る。 ほんの一瞬でその美少年が私に近づき、なにか針のようなものを刺してきたのだ。 「な、なに、を……」 ちょっと刺されただけなのに急激な眠気に襲われ、ぐわんぐわんと目が回った。 とてもじゃないが立っていられなくなりその場に崩れそうになるとその美少年が私を支えてくる。そして、耳元に聖歌隊のような美しい声が届いた。 「おとなしく婚約破棄に同意していればよかったのにね」 そう言ってにっこりと笑う美少年の微笑みを見ながら私は深い眠りに落ちたのだ。 あぁ、まだアヴィレックス殿下から生BLトーク聞いてないのに……! 楽しみを前におあずけされるのが、こんなにも苦しいと初めて知ったのだった。
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