7人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
それから勇吾と静子は度々二人で会うようになった。
講義の内容やレポートのなどについて話すこともあれば、本当に他愛のない用事で連絡を取ることもある。服を買いにいくからついてきて欲しいなどと静子からせがまれることもあった。
「瀬尾くんとは上手くいっていますか?」
静子が勇吾に対してそう尋ねると大抵彼の顔は不機嫌そのものに切り替わる。
「お陰様でな。毎日毎日、白江さんが笑った、白江さんと話せた、とうるさいよ」
「そうですか」
「お前と会っているのがバレたら、またやっかまれる」
「どうして?」
「それはお前。学はお前のことが好きだからさ」
「ああ、そうなんですね」
「そのくらい分かれよ」
恋愛の機微に疎い奴だと勇吾は文句を言ってやりたかったが、分からないのは静子がこうしてわざわざ自分と会おうとするのかということ。自分で言うのも何だが初対面の印象は最悪だったはずで、そうでなくても今こうして話している俺の態度が快いものでないのは確かだろう。この女の考えていることはまったく分からない。
そうして勇吾が難しい顔をしていると。
「勇吾さんは恋愛の機微が分かってませんね」
静子はなぜか笑うのだった。
最初のコメントを投稿しよう!