1 灰色の日々

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救急車が患者の女性を乗せて去っていく。 ベットは何だか変な臭いがする。 「先輩」は警察の事情聴取で外の巡視車両の中だった。 窓を開け、風通しを良くし、澱んだ空気を追い払う。 2LDKのアパートを見渡す。 二週間で随分荒れたな、と思った。 メンテナンスが滞こうって、汚れとゴミが溜まっている。 リビングのソファー周りにはポリ袋が置き捨てられていた。 道路に面した窓から顔を出す。 日の光が眩しい。 路上の巡視車両がドアを占めて去っていく。 部屋に向き直ると、「先輩」が立っていた。 「何ですか」 「おまえ。向いてるよ」 「普通の判断処理ですよ」 「お前の、知り合い、呼んどいた」 「誰ですか」 「買い物行ってくる――」 「先輩」はそう言ってドアノブに手をかけた。 「――ゆっくりしててくれ」
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