1 灰色の日々

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スクーターを路肩に止め、自動販売機でコーヒーを買う。 コーヒーを飲みながら今日の寝床を遠く眺める。 午後九時半、部屋の灯りはついていた。 十階建てのマンションの三階。 ドアの前に立つ。 初めての相手で緊張する。 ドアホンのボタンを押した。 「どちら様」 「エドガーですが」 ちょっと沈黙があって、無言でドアが開く。 「どうぞ」 不機嫌そうな同世代ちょっと上の女性が立っていた。 10㎡程のダイニングキッチンに案内された。 「改めて初めましてライズ・エドガーです」 「アリス・ドリアンです」 テーブルを挟んで向かい合わせに座る。 言葉が続かない。 初対面の女と如何にして親密になるか。 それがこの出会いの課題だった。 取り敢えず寝床を確保しなければ。
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