28人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
メモ帳に書かれた食料品の文字列をただ買うだけの作業。お釣りは私が貰って良いとの事だった。子供扱いされている気がして、少しばかり腹立たしくなる。
ご近所にある大型スーパーで買い物を済ませ、レジ袋片手に自宅までの道を歩く。春の訪れを感じるこの季節でも少しだけ寒く、黒の猫耳パーカーにジーンズという私が選んで購入したラフな格好。歩道に薄らと積もる雪を、薄茶のムートンブーツで踏み締める。髪は短いまま…枢に切られた時と同じぐらいの長さのままで、首筋がスースーしていた。
引き戸のような門も閉め、自宅の方のドアを開けようとした時
ピピピ…ピピピ…ピピピ…
郵便受けから軽やかな電子音が聞こえてきた。左手で郵便受けを開けると、中には見た事も無いスマートフォンが入っていた。液晶画面には非通知の文字があり、正直出たくは無かったがゆっくりと耳に当てる。
「……もしもし」
『お久しぶりです、琴葉さん。半年ぶりですね』
気持ち悪い程の優しく甘い声は、相変わらずだった。
「枢さん」
最初のコメントを投稿しよう!