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彼は視線を彷徨わせる事無く、ジッと私を見詰め続ける。私はそれを見詰め返し、ゆっくりと説明する。
「死神には掟というものが存在します。と言っても、1つしか存在しないんですけれどね。
死神同士で殺し合ってはいけない。万が一やってしまった場合は、両者とも死に至る。
というものです。私には親が居ないので、間違っているかもしれませんが」
「だとしても、枢はそれでも手に掛けそうだ。だから言ってる」
それは心配なのか、説教なのか、良く分からない。だから、ハッキリと思っていた事を告げた。
「私と、もう居ない花凛さん。枢の死と、私の生。どっちが大事なんですか?」
ただの嫉妬のような感情。ずっと殺された花凛さんの復讐を望んでいた彼は、彼女が存在しなくなっても尚その影を追い求めた。私と恋仲になっても、それは変わらなかった。
「分からないんです、隼人さんが何を考えているのか。私をただ利用したくて交際しているのなら、別に一生それでも良いです。でも違うって言うのなら……違うなら、もう居ない花凛さんをずっと追い求められるのは、……幾ら私でも辛いですよ」
私は何でも言う事を聞く、ロボットじゃないんです。
彼に愛して貰いたい。
誰からも愛された事など無い私を。花凛さんの事など忘れてしまってくれと柄にも無く願った。私は承認欲求に埋め尽くされていたのだ。自分でも気付かぬ内に、彼に絆されていたなど今更認めたくないとも思いながら。
ずっと目を見開いたまま固まる彼を置いて、靴を履いて玄関から出た。
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