天秤と鎌と魔眼

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「さてと…」 自身の子供携帯と枢が寄越したスマートフォン。財布はそもそも持っていないので、お釣りの1500円だけを持っている。その状態で歩道を歩く。赤い点が示す場所を目指していると、人工知能なのか案内モードに切り替わる。 『この先右方向です』 「ここは駅でしょう…」 有楽町線(ゆうらくちょうせん)に繋がる駅(最寄り駅)に辿り着いた。駅に入り、『お乗り換え情報はこちらです』という声の指示の元、麹町(こうじまち)駅までの切符を買い改札を通る。そんなに人は多くなく電車内も静かだった。 メトロの電車に揺られる事数分。麹町駅に降り立ち、指示の通りの改札を通って街中に出る。各国の大使館やら、大学やら、研究所が立ち並ぶこのエリアは2020年を境にさらに学校関連の建築物が増えたらしい。 その中の1つが枢が通う学校…、私の目の前に立つそれ、私立桜楓高校だ。学校には時計塔も立ち、大きな鐘が千代田の街を見下ろしている。私が前に行った『華ノ宮女学院』よりも大規模な学校なのでは無いだろうか。10年前に建設されたものなので比較的新しい学校だった。 門のすぐそこ。一般人も利用出来るカフェテリアに見知ったような影を見付けた。出来るなら記憶から消し去りたいけれど、あの書生服と金色の目を見間違える筈が無かった。 目が合うとする恍惚とした表情も、変わらなかった。 「仕事外では初めて会いますね、お嬢さん」 麻色のおかっぱ髪がユラリと揺れる。
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