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訃報が届いて、すぐには信じられませんでした。ご主人に頼み込んで村に返してもらって、白装束の妹を見た時は愕然としました。
別れた日の面影がない程に、妹がやつれていたからです。私よりも老けて見えるくらいで、目は落ち窪んで、体は骨と皮だけになっていました。
葬儀で知ったんですけど、ご主人はね、治療費なんか送っていなかったんです。それは叔母さん達も了承していた。私は嘘をつかれていたんですよ。叔母さんにしてみれば、お荷物の私をどっかにやりたかったんでしょうね。
お屋敷に戻ったら、ご主人を問い詰めましたよ。そりゃあね。でも、ご主人は悪びれた様子もなくって、あっさりと嘘を認めました。
酷い酷いとなじりましたが、私にできることといったらそれくらいで。他に行く宛てはありませんから。
だから、ご主人も妹の葬儀へ行かせてくれたんですかね。嘘がバレても問題ないって。
それ程、私はあの人にとって、取るに足らない人間だった。
あの人だけじゃない。叔母さんも、村のみんなも、屋敷の家族も、使用人達も。だあれも、私なんて必要としていない。私はどうでもいい人間だった。
私はね、人に必要とされたことのない、矮小な人間なんです。
悲しくて、悔しくて。
そんな心持ちだったせいでしょうか。
私は鬼に行き遭ったんです。
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