咲う鬼嫁

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 親戚の集落も小さな村でした。山と山の間にあって、畑にできる土地がわずかなせいで、とても貧しかったです。山に阻まれて日が差すのも少しの間だけでした。  親戚の家もご多分に漏れず貧しくて、当然ながら歓迎なんてされませんでしたよ。  私には妹がいて、一緒に親戚の元へやって来たのですけれど、一人どころか二人も面倒をみるなんて、と叔母さんにはしょっちゅう愚痴られました。  私はほら、このとおり器量が良くないでしょう? 美人なら嫁の貰い手がついたのにって、そしたらさっさとお払い箱にできたのにって言われましたよ。  え? ふふふ。いいんですよ。叔母さんの家もカツカツの暮らしだったんだから、そんなに責めちゃあ、あんまりですよ。まあ、手をあげられたわけでもないし。なんてことありません。  ああ、ただ、妹は可哀想でした。  妹は私の五つ下で、両親が死んだことがよく分かっていなくて。だから辛く当られた日は、家に帰ろうよとすがってきました。私は幼い妹になんと伝えればいいのか分からなくて。迷って迷って、結局いつも何も言えませんでした。  妹は私にとても懐いてくれていて、私もそんな妹が可愛くて仕方がなかった。  だから、汁物の具が私達だけなくて、羨ましそうに叔母さんちの子が食べているのを眺めたり、母さんの簪を叔母さんが売りに出す時、寂しそうな顔をしたりする妹を見る度、私はとても辛かった。  ひもじい夜は一緒の布団に入って眠りました。寒いより温かい方が空腹を誤魔化せるような気がして。  私は妹さえいてくれたら、他になんにもいらなかった。
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