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導入:神社にて
とある春先。
とある午後。
暖かい風が樹木の枝を揺らして吹き抜ける。風は鳥居を通り、やがて神社へとたどり着いた。
神社正面の向拝の段差に、ブレザーを着た女子高生が座っている。
彼女は辺りを見渡す。
歴史を感じさせる、朽ちかけの木造の社。
神社を照らす日差しは樹木により遮られ、日差しと影が絶妙なコントラストになっている。
まるで狐のような体型の狛犬は苔で覆われており、この神社の歴史を表しているようで、遥かな時間を感じさせるような、そんな美しさがあった。
壊れた石段や、元々の赤色が全く残っていない鳥居ですら、時間という名の染物屋による技巧に思える。
この神社に来た者は、“この神社には神様が居るに違いない”と思うだろう。
だが彼女は、そうは思わなかった。
どうしてか。
それは彼女には“そういうものが観えるから”だ。
「……。」
彼女は力なく立ち上がる。
日差しが彼女を照らす。
日差しを浴びた彼女の短髪、そして瞳の色は、まるで蜂蜜のような、ベッコウ飴のような、美しい色をしている。背丈は150センチを少し超えたくらいで、その顔には幼さが残っており、活気はなく、痩せ気味であった。
飴色の少女は向拝を登る。
彼女は通学バッグからロープを取り出した。
ロープは大きな輪っかが作ってある。
彼女はロープの端を柱へ結び付け、輪っかの中へと首を入れ。
体重がかかっても問題がないことを確認したあと、彼女は体の力を抜いた。
脱力。
軋むロープ。
数秒後、
彼女は意識を手放した。
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