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11話 これからの、活動
叫び散らす螢に対し、樹はケラケラと笑うばかりだ。
樹は会長席に着くが、螢はいろいろなことが重なり腰が抜けたようだ。這いつくばりながら応接ソファへ移動する。
よいしょと座ったところで、麗華から螢へ2杯目の麦茶が差し出された。
「あ、ありがとう、麗華さん」
「麗華でよろしくてよ、螢さん?」
そう言った麗華の美しい鼻に、テッシュがぎゅっと詰め込まれている。
螢は麗華の次の言葉で理解した。
「……はぁ……こう……麗人と麗人のまぐわいは、たまりませんわね……はぁ……」
「は!? まぐわってないし、どこまで妄想した??」
一方、陽菜は絶望に顔を白く染めていた。
楽しい見学だけで終わるはずだったのに、自分のミスで生徒会の危機が来たのではと、陽菜はダイオウグソクムシを抱え、震えている。
「陽菜ちゃん……」
「な、なんでしょう、螢副会長」
すがるように走り寄ってきた陽菜に、螢は目を細めるが、少し頬が赤い。
「……あの、さっきの写真、あとで送ってくれる?」
「……いいです、けど……?」
「……スマホで、あんなステキな写真撮れるんだね。やっぱ、カメラマンになりたいだけあるね、陽菜ちゃん」
「……ぼ、ぼだるぜんばぁぁぁいっ!」
抱きつき、泣き出した陽菜をあやす螢に微笑む麗華だが、手招きする樹に、
「なんでしょう?」
「麗華くんなら、どうする?」
樹の横に立った麗華は、改めて鼻血をぬぐいながら顔を引き締め直すと、トントントンと、指でこめかみを叩いた。
「……そうですわね。公認カップルでいくか、アピール第2弾とするか、ですわ」
「なるほど。それなら、タイミングが大切になるな。陽菜くん、新聞部の動きはしっかり留めておいてほしい」
盛大に鼻をかむと、陽菜はビシッと敬礼をする。
「会長、了解ですっ! 交渉、行って参りますっ」
「快斗、生徒会メンバーでの恋愛事例は?」
「んー、そうだなぁ……」
快斗はスマホを操作すると、小さくうなずいた。
「……あったことはあったみたい。芸能人の恋愛みたいなもんだから、別れた報告とかやんなきゃダメだけど。どうする?」
樹は顎に指をかけながら、螢を見る。
「副会長くんはどうだろう? 秘密にするのも、アピールにするのも、もちろん公にするでもいい。僕が有名人すぎるからね。申し訳ない」
悲しげに笑う樹に、
「嫌味に聞こえないのがすごい……」
逆に感心してしまう螢がいる。
だが、再び顔が真っ赤に燃えだした。
──お互い、告白したんだ……!!!!
意識した途端、もう上半身が燃えているように感じる。たっぷりの汗が流れ始めるなか、周りが冷静すぎて螢が空回りしはじめる。
「あああああ、でででででも、私なんかより、事務所の関係とか、そっち優先じゃあ……?」
「僕は事務所とは、君とだけは自由に恋愛していいっていう契約を結んである。そういうことには、抜かりはないんだ」
あまりの用意周到さに螢の口は塞がらない。
全て、手のひらで転がされている……。
思考回路が壊れた螢の横に、腰をおろし直した樹は螢の手を優しく取る。
「なななななに?」
「その、僕の気持ちとしては、公にしたい、なって。……こうやって、君と、手を繋いで帰りたいし、守りたいからね」
もう消し炭になっていてもおかしくないほど、螢の顔が燃え続けているが、樹は幸せそうに微笑むばかり。
再び唇の接近を探知した快斗が、2人の間に滑り込んだ。
「うらやまけしからん! 樹はいつから外国かぶれになったんだ? ん?」
「え? スキンシップは大切だってアメリカ人とイタリア人のモデル友だちから。一番の愛情表現はキスだから、それは1番最初にって言われてて……」
頭を抱える快斗だが、それを見つめる麗華がつぶやく。
「3P……」
「麗華さん! なに妄想はじめてるのかな!? かな!?」
「あら、麗華でよろしくてよ、螢さん」
──新メンバーでの生徒会の出発は、スムーズとはならないようだ。
ただ、翌朝の号外から、2人のとりまく景色が変わっていくのは間違いない。
『学園公認カップル』と、2人はなれるのか。
試練が、また、始まる───
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