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6話 螢の悩み
螢は学校を休んでいた。
腹痛という仮病で休んだのだが、昨日のことがあり、瑠々になにかの被害があるのではと怖くなったからでもある。
「私がいなくなればいいのかな……?」
明日は瑠々との買い物の日。
断った方がいいだろうとスマホを持つのだが、瑠々からは、『今日、しっかり休んで、明日、いっぱい遊ぼうね』なんて連絡が来ている。
「どうしたらいいんだろ……瑠々の親衛隊に襲われた、なんて言えないし……」
悩めば悩むほど時間が経つのは遅くて、早い。
明日は、本当に楽しみで、自分から断るのも辛いのだ。
もしかしたら、気のせいかもしれない。
大丈夫かもしれない。
でも、瑠々に危険があるかもしれない……
昼ごはんも喉が通らず、夕ごはんも食べられなかった。
仮病が本当の病気になってしまいそうだ。
だが、ふと蘇ってくる、会長の背中──
「会長、どうやって吹っ飛ばしたんだろ……?」
あまりに急すぎて、目で追えなかった。
あのフワフワしてる会長が、咄嗟に動ける男だとは思っていなかったのもある。
しかも、そこそこ体格のいい男子を転がしていたのには、思い出すたびに驚いてしまう。
「……カッコ、よかった、な……」
普通の女子なら、間違いなく、卒倒しているシチュエーションだろう。
美男子が窮地に咄嗟に現れて、暴漢をやっつけたのだから。
「なんで、続くかな……」
ここのところ、キュン! とするポイントが多い。
おかげで、一目惚れのあの人がかすみ始める始末。
螢は首を横に振り、イケメン生徒会長を追い出した。
「勘違いしちゃダメ、私! 私なんかがドキドキしちゃうなんて、バカよ、バカ! ただただみーんなに優しいんだよ、あの人は! たまたま、続けてそうなっただけだから!!! 私のことはただの副会長! ただの、副会長ーーー!」
叫んだのに疲れたのか、ペットボトルの水を飲み干し、窓を見る。
今日は薄曇りだ。
心と同じ色に感じ、ぼそりと言葉がわき出てくる。
「……あの会長なら、こんな悩み、ズバッと解決してそー…………あー! またアイツに頼ってる……」
ごろりとベッドで寝返りを打ってみるが、何もいい案は浮かんでこない。
螢にだけ向いている敵意ならどうにかできそうだが、相手が絡んでいる分、下手に動けない。
探りを入れようにも、人脈もない螢には、向こうが行動を起こさないと対処ができないという、3歩以上遅れてでしか対応できないことに、苛立ちもわいてくる。
「目星つけようにもなぁ……。思えば、瑠々のファンクラブって、学校にどれぐらいあるんだろ……あー、そういうのも全然知らないんだ、私……それって、友だちとしてどーよ。もー……」
スマホで瑠々のファンクラブを調べたり、口コミを調べたりと時間を割いてみたが、今日に繋がる書き込みや、S N Sでのコメントも見当たらない。
「……えー……一部の信者の犯行ってやつ……? 余計にわかんないんだけど……」
瑠々がらみの自分へのアンチコメントを探すのは、心が色んな意味で折れる。
なぜか、副会長としての自身への心ないコメントも見つけ、ベッドに深く沈み込んだ23時。
瑠々から唐突にメッセが入った。
『たすけて』
たったの4文字だが、螢を動かすには十分な文字数だった。
場所のポイントも送られている。
動かないわけにはいかない。
なぜなら、瑠々は、憧れであり、大切な友だちだから。
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