温かいスープは贅沢品

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「いただきます」 「いただきます」 (…なんか味がおかしい気がする) (そうでしょうね)  一瞬目を合わせたが、そのままスープを飲んでいる。美味しくないスープ飲んでやっている俺かっこいいと思っているらしい。インスタントスープは規定量通りの熱湯を注げば美味しいが、今日は2割増しでお湯を入れたので、濃い色がついているうっすい味のお湯である。いっそ白湯の方が美味しいはずだ。  もちろん私の分は美味しいスープなので良い匂いが部屋に漂っている。自分の分は味も匂いも薄いはずなのに懲りずに口をつけている事がいっそすごい。  お湯1割増しで気づかないから2割増しにしてみたが、持っている器が温かいというだけで「美味しいスープに違いない」と思いこめるらしい。天才だな。  遠くの本妻より、近くの愛人か。やれやれ。  ちょうどスープが冷める場所に住んでいる愛人が冷めて来ているのに、繰り返されるこの面倒な小芝居。 (…こりゃ本妻と別れる気ないな)  明日はちょっと水でも入れてみるか。まずいスープの方が難しい。はー…手間のかかる奴め。
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