実録! 違法文房具の誘惑

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 全く馴染みのなかったテレワークとやらが日常になり、一年の半分近くを自宅で過ごさなければならなくなって数年経つ。これに伴いペーパーレス化を進めるために、紙とペン類の製造自体が規制された。紙は辛うじて自作出来てもペン類が手に入らない。闇紙業者、闇ペン業者の存在が噂されるようになっていた。 (プライバシー保護のため音声を変えております) 「法律を破っている自覚? もちろんあります。引き出しの奥に古い鉛筆を見つけ、軽い息抜きのつもりで古びた紙に字を書いてしまった時の感覚…なんで忘れてしまっていたのだろうと愕然としました。あなたも今の世の中をおかしいと思っておいでなのでは?」  そっと手渡されたものを見ると、カラフルなチラシの裏で作られた手作りのメモ帳とロケットペンシルだった。美術館に所蔵されていてもおかしくないアンティークが自分の手の中に存在している。  記者はメモ帳に何か書いてみたい衝動を必死に抑えた。  これは現代では取り締まる対象、違法なのだ。 「なんなら次は香り玉つきのキャップ、ご紹介しますよ」
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