終章 けじめと別れ

11/12
1040人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
「真莉愛さんにさよならを言いに来ました。今まで、ありがとうございました」  美桜は真莉愛に別れの挨拶をした。 「さよならって、あんた、勝手に家出していたじゃない」 「はい。心配かけてごめんなさい。今度は家出じゃない。正式に真莉愛さんと暮らしていた家から自立します」 「自立って、仕事もしていないくせに? どうせ、その男のところに転がり込んでいたんでしょ」  真莉愛が侮蔑のまなざしで翡翠を見たので、美桜は翡翠を庇うように前に立った。 「私は確かに、この人と一緒にいるけれど、ちゃんと仕事をしています」 「馬鹿で無能なあんたに何ができるっていうのよ!」  真莉愛が癇癪を起こした。美桜は困った表情を浮かべたが、毅然とした態度で、 「それから、真莉愛さん。以前、私から取り上げたネックレス、返してもらえませんか?」  と、言った。真莉愛が、 「はぁ? いつの話よ。あんなの、もう捨てたし」  と、目を剥く。 「そんな……」  美桜は動揺したが、真莉愛はそんな美桜がおかしかったのか、鼻で笑った。その時、ニャーンと猫の鳴き声がした。美桜には聞こえたが、真莉愛には聞こえていないその声は、猫又が発したものだ。黒猫のいる方向に目を向け、美桜は小さく「あっ」と声を上げた。
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!