後日談 ずっと見ていた

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***  芙蓉は、食堂で美桜がマカロンを完成させるのを待っていた。 (まかろんって、どんなお菓子なのかしら。お母様は、ほろほろとした繊細なお菓子だと言っていたけれど)  美桜の作る洋菓子は、めずらしいものばかりで、甘いものが好きな芙蓉の心を掴んで離さない。 「できましたよ」  美桜が厨房から、皿を手に、食堂へと出てきた。 「バニラマカロンです」  茶会に出たという、白いマカロンは、まるで月のように丸い。 「お抹茶を点てたいところだったのですけど、人に出せるほど上手ではないので、緑茶を入れました」  美桜がマカロンと一緒に、芙蓉の前に茶を置いた。 「可愛いお菓子ね! さっそくいただくわ」  芙蓉は皿の上からマカロンを手に取ると、口に運び、半分囓った。すると、 (本当にほろっとしてる)  白蓮の言うとおり、柔らかな食感だ。それでいて、中に入っているチョコレートガナッシュはなめらか。 「おいしい……!」  満面の笑みを浮かべた芙蓉を見て、美桜が嬉しそうに笑う。 「良かった」 「お店で売らないの? もったいないわ」 「現世の材料がいるので……。でも、時々なら、限定として出してもいいかもしれません」  考えながら答えた美桜に、 「そうしなさいな」  と勧める。 「このお菓子、穂高にも食べさせてあげたい」  想い人のことを考え、芙蓉がつぶやくと、美桜は、 「じゃあ、持って行ってあげてください。穂高さん、まだ食べたことがないから」  と言って、微笑んだ。 「おいしいものって、好きな人にも食べてもらいたくなりますよね」 「美桜も、そうなの?」 「はい。いつも、翡翠と一緒においしいものを食べたいって思っています」 「穂高さんの分、用意しますね」と言って、厨房に入って行った美桜は、すぐに新しい皿にマカロンを載せて戻ってきた。 「芙蓉さん、どうぞ。穂高さん、蒼天堂の事務所にいると思います」  美桜に教えられ、芙蓉は「ありがとう」と礼を言うと、皿を受け取って、食堂を出た。
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