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プロローグ
人と人との出会いとは、本当に不思議なものだと常々思う……。
出会いの場所は様々で、
学校だったり、会社だったり、ご近所だったり。はたまた、空港、港、駅、どこかのお店だったり、公園だったり、(思い付くのが少なすぎて自分でも悲しくなる。)
ありとあらゆる場所で人は他人と出会っている。
人がいるところに自分という存在を投入すれば、おのずと何かしらの出会いが生まれる。
でも、そんな当たり前の出会いはもう、自分には訪れないと感じていた。
なぜなら、私は引きこもりだから……。
引きこもり歴、はや10年。
私は今年で30才になる。つまりは、20才からずっと、引きこもっていることになる。
引きこもりを始めた理由は、当時通っていた大学が嫌になったわけでも、家族、友人、恋人(当時はいた)との関係性が滞ったわけでもなかった。
趣味で書き続けていた小説を誰かに見て欲しくて、でも、身近な人には恥ずかしくて見せれなくて、思いきってとある新人賞へこっそり応募したところ、なんと優秀賞を頂いた。
そして、書籍化。
これだけでも、私にとっては青天の霹靂だったが、なぜかその作品が有名芸能人の目に止まり、SNSで面白いと持ち上げられた。
それがキッカケで、その作品はアニメ化と映画化がされ、トントン拍子で私は名実ともに有名小説家となった。
しかし、世の中、そんなに甘くはなかった。
……今の私は一発屋作家となっていた。
あんなに有名な作品を書きながら、その後は鳴かず飛ばずで、中々思うように書くことが出来ず、焦りばかりがつのるばかり。
どんなに優しい編集者さんに助言を頂いても、頭はすっかりアイディアの抜けた乾燥したスポンジのようで、一行に頭のスポンジに水を浸すことは叶わなかった。
そうして、月日は過ぎ去り、誰にも見向きもされなくなった頃には私は完璧な引きこもり人と化し、気がつけば10年の月日が過ぎていた。
引きこもりだから出来ることは限られているが、何をやっても上手くいかない。
作家といいながら、この10年の間に出せた本はたったの一冊だけ。
世の中には毎年、数冊の本を出し、売れている作家が沢山いるというのに。
たぶん、私はあの初めての作品で全てのアイディアと幸運を使いはたしたのだろう……。
まるで私の人生が陳腐な小説のようで笑えてきてしまう。いや、本当は心底泣きたい。
そんな時、私は彼と出合ったのだった。
出合ったという表現はおかしい。
正確には、私が彼を“見つけた”のだ。
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