成瀬、問題越えろ

1/1
前へ
/5ページ
次へ

成瀬、問題越えろ

 成瀬、お前太ったか? 山形国際ホテルで仕事中に俺に向かって先輩が言った。 「え···」 俺は絶句した。 色んな店が次々に出ては消えていく。 太らないわけはないよな。 気付かなかった。 それが最初の事だった。 ちょっと控えめにしようと思った。  ホテル業務に戻ると先輩だけじゃなかった、ん?という顔をして女性の方も「成瀬さん太りました?」と言ってくるようになった。 えー···太った?俺。  成瀬さんの体重を調べましょう。 一週間ごとに。成瀬さんのかっこよさが女性仲間からがっかりしてきましたので。 「趣味で太っただけです」 「仕事大事でしょ?しばらく趣味を休んでください」 しばらく趣味休んでくださいですと···。  美味しいお店の前で悲しい顔をする。 仕事大事でしょ? でもお店··· 俺は走った。  ホテルの仲間が俺の手を繋ぐ。 「成瀬さん!」 女性が呼ぶ。俺は止まり名前を覚えていなかった彼女に向く。 この綺麗な方は、思い出した。 山形国際ホテル美人ナンバーワンだ。 上山さん。 「私も同じだった。教えるよ」 上山さんが言った。 「ありがとうございます」 俺は頭を下げた。 ありがたい仲間。 「まずは運動、頑張ろ」 上山さんが俺を連れて運動の場所へ連れていく。スポーツジムという物だろうか、そういうのだろう。 しばらく運動をして外に出る。 ホテルのすぐそばにあったのに気付かなかった。 「成瀬さん、自分で作るのははまらない?食べ歩きだけ?」 「食べ歩きだけですけど」 作る?料理を? 「そっか」 上山さんが言った。  ラーメン食べたい。 仕事が休みで運動はしない日、上山さんに会わない。そして食べ歩き禁止。 ラーメン。 ラーメン。 ヤマザワにあるひまわりラーメン、馬鹿にできない美味しさ。 麺を口にしてチャーシューを、少ないと思うが食べる。 たまらんラーメン。 麺工房華みずき。ラーメン山之助のチャーシューラーメン。龍上海のラーメン。鬼がらしラーメン。どこに食べにいく。上山さんにばれないように食べまくりたい。 栄屋という店。 俺はラーメンを注文する。 座って待つ。 「成瀬さん、やりましたね」 背後で声がした。 ギクリと俺は固まる。 上山さんが立っていた。 「たまには···」 俺は言う。 「そうね、厳しすぎも痩せないもの」 上山は俺の隣に座る。 店員に注文をした。 「栄屋は美味しいよね」 上山が言った。  上山と俺はラーメンを食べる。 「上山さんに怒られなくてよかった」 「怒らないよ。私、上山珠乃したの名前呼んでよ」 上山珠乃はそういった。 「名前はまだ···」 俺は照れる。 ちょっとしたいい雰囲気だった。  運動と仕事。 そして食べる。 最近上山珠乃と食事に行くこともある。 だが恋愛は全くない。 そんな日々。 三ヶ月で十分やせれた。 やせて、上山珠乃からの助言は食べるなら運動をするという助言だ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加