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その日の夜、俺は見てはいけないものを見てしまった。 駅前のカフェの窓際の席に、朝賀くんが座っていた。ぼんやりと改札の方を眺めながら、手の上でスマホを弄んでいる。 寂し気で、切なげな表情で頬杖をつく彼は、もう高校生には見えなかった。 恋する顔だな、朝賀くん。 俺は心の中で呟いて、改札を見つめる朝賀くんを見つめる。 定食屋で見かけていた、学生の頃の朝賀くんは、明朗快活、よく食べ、よく笑う、という印象だった。 高校生に見間違えるほど純粋そうで、可愛らしかった。 それが今は、スーツを着て、夜のカフェで切なそうに頬杖をついている。 大人になったな、朝賀くん。 応援したくなるじゃないか、朝賀くん。 ・・・いや、絶対、応援できないんだけどさ。 情にほだされた頭を抱えて唸る。 俺が母性本能くすぐられて、どうする!
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