3.

1/10
前へ
/51ページ
次へ

3.

マンション前まで来ると、鈴音さんの部屋の明かりがついているのが見える。 ホッとする反面、朝賀くんは待ちぼうけだな、と少し胸が痛む。 鈴音さんに電話をかける。 「もしもし?」 「鈴音さん。ただいま。」 「おかえり。どうしたの?」 「うん。声聞きたくて。」 「隣にいるんだから来ればいいのに。」 「うん。行く。」 エントランスをくぐり、エレベーターに乗る。 やっぱり譲れないよ、朝賀くん。 俺は汚い大人になったような気持ちになりながら、鈴音さんの部屋のチャイムを鳴らす。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加