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ふいに鈴音さんが青年を見上げ、鈴音さんを盗み見ていた青年と目があう。
鈴音さんがニッコリと笑う。
青年の耳が真っ赤になり、ぎこちなく頷いた後、そっぽを向く。
ん゛ん゛ん゛っ!!!
俺は立ち止まり、二人を凝視する。
困った。大人げないが、ジリジリする・・・。
二人に近づこうと大きく一歩を踏み出したところで、青年が手を上げて路地を曲がっていく。
俺は、ホッと息をつく。
小走りに鈴音さんに近寄る。
「鈴音さん。」
「あれ、佐々木さん。」
鈴音さんが振り向き、嬉しそうに笑う。
「いつから後ろにいたの?」
「駅出たところから。遠慮してたら声かけそびれた。」
「遠慮しなくてよかったのに。」
鈴音さんがクスクス笑う。
「声かけてもよかったの?」
「うん。当たり前じゃない。」
こんな一言で、ざわついていた心が落ち着きを取り戻す。
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