1.

4/7
前へ
/51ページ
次へ
「さっきの子、おかみさんの所で見かけたことがある。」 「朝賀(あさか)くん。常連さんだったの。」 「高校生かと思ってた。」 鈴音さんがコロコロと楽しそうに笑う。 「大学生だったんだよ。」 「高校球児に見えてた。」 「坊主ではなかったよ。」 クスクス笑う顔を眺めながら、安心感が胸に広がっていく。 「数ヵ月見かけないうちに社会人になってた。今は会社の近くに住んでるんだって。今日は仕事でこっち来たみたい。」 「まだ仕事中?大変だな。」 「新人営業マンはこき使われるんだって。」 鈴音さんが笑う。 「名刺もらったの?」 「うん。」 鈴音さんが名刺を取り出し、見せてくれる。 ・・・んーーー。 予想はしていたが、やはり手書きで連絡先がメモされている。 せっかく落ち着いた心がまたざわつき、ピクリと眉を動かす。 落ち着け。カッコ悪いぞ、俺。 俺は平静を装って微笑む。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加