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「大手に就職したんだね。すごいな。」 「そう言ったら、照れてたよ。」 名刺を凝視していると 「転職したいの?」 と聞かれる。 「いや、連絡先が書いてあるな、と思って。」 結局、気になっていることを口にしてしまう。 「食品会社だから、叔母さんの定食屋で仕入れてくれませんかって。」 「営業でプライベートの連絡先教えるの?」 「勉強のために、飲食店の人の話も聞かせてほしいって。」 「鈴音さんは飲食店の人じゃないでしょ?」 「叔母さんに聞きたいんじゃない?」 「じゃ、店に直接行けばいい。」 「たまたま、私に会ったからでしょ?」 「ふーん。」 かばっているわけじゃないのは分かっている。 分かっているのに、口がへの字に曲がってしまう。 鈴音さんがクスクスと笑う。
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