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昼休み。
いつもの屋上で昼食を食べる。
「お恥ずかしいところをお見せしてしまい申し訳ない……」
「ほんと、あやすのに時間かかったぜ」
ホームルームを始めようと教室に入ってきた担任は「何事だ!?」と驚いた顔を思いだし、顔が熱くなる。
「見てみてー、桜井の鼻水のあと~」
「恥ずかしいからやめてよ!」
シャツを見せびらかす陽波を必死で止めに入る。
どうしてこの人って所々残念なの。
今朝は格好いいって思ったのに。
そう。
私はあのとき、彼にときめいてしまった。
今思いだしても胸が高鳴る。
抱き締められた時の彼の温かさ、背中を叩く優しい手つき。
(悔しいから言ってやんないけどね)
完全にこのときめきを認めたわけではない。
この気持ちはまだ黙っておくことにする。
「なに、じっと俺を見つめて。もしかしてときめいちゃった?」
「そ、そんなわけないじゃない!」
「やーい照れてる照れてる~」
「もう! 陽波のバカ!」
陽光が照らす春のなか、私を救ってくれたヒーローは嬉しそうに笑っている。
こんな学園生活も悪くないと思えてしまうのだ。
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