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大昔から森の奥には、一人の魔女が住んでいるという噂があった。
その魔女は屋敷の周囲に生えた木々を操って人間を自分から遠ざけて、完全に人間社会から隔離した場所で生活いたらしい。
森で迷子になった子供や猟師が噂の出どころだった。
なんと彼らは、魔女を実際に見たというのである。
これはかなり厄介なことだ。
噂を聞きつけた政府は直ぐに魔女討伐計画を練り始めた。
魔女は絶滅したとされている今、兵士の教育に戦う相手を魔女と想定されたものは組み込まれていない。
魔女の力は偉大である。慎重に事を進めなくてはならず、しっかりカリキュラムを組んで兵を教育するのにかなりの時間がかかっていた。
しかし数年前から、魔女の噂がピタリと消えた。
不審に思った政府は今回、厳しい対魔女の訓練を受けた我々調査隊を召集し、早速魔女の森に送り出したのである。
──────
古い木の床がギシリと音を立てた。
古ぼけた屋敷をあちこちで調査員が慎重な足取りで、ホコリ一つ見逃さないといった気迫で歩き回っている。
調理場には出しっぱなしの鍋と包丁、倉庫には大量の原木、ベッドルーム、風呂場、そして床下の部屋には一つの中身がない棺が見つかった。
生活感のあるものが散らばっているが、屋敷からは人っ子一人現れない。
それにこの古ぼけた様子を見るに、屋敷の持ち主はとうの昔にいなくなったと推測するべきだろう。
一人の調査員が、本棚がたくさんある部屋を見つけた。
びっしりと敷き詰められた本が異様な威圧感を醸し出していて、不気味である。
部屋の雰囲気はどことなく陰気で気味が悪い。
調査員も眉をしかめるほどであり、開け放たれた窓から漏れる陽気な白い光が唯一の救いのように思えた。
ひらり、ひらりとカーテンが風に揺れる。
部屋の片隅にはベッドと、その隣に本が大量に乗せられた机が置かれている。
その大量の本の中で一冊だけ開いた状態で放置されているのが見えた。
近づいてみてみると、何らかの走り書きが記されているノートであることがわかる。
周りの書物は魔女を題材としたものが多かった。
このノートの持ち主は、魔女について調べていたのだろうか。
調査員は手に持っているライトを使いながら、そのミミズのように汚い文字を読み始めた。
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