影追いの月

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 炎が夜を赤く染め上げる。  歴史の上では、些細な出来事だ。皇帝の覚えめでたき剣豪が、前々から諍いのあった大臣の謀略にはまり、反逆者へと追い落とされたというだけのこと。  庶民には、男の罪状云々よりも多額の懸賞金の方が身近でわかりやすく、魅力的だった。男は身の潔白を晴らすべく駆け巡ったが、金に目が眩んだ旧友の裏切りに遭い、追われた末にこの山を己が墓標と定めた。  ただそれだけのことだ。
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