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柘榴は女に幾つかの質問をし、それと自身の考えを加えて七夜に説明した。
「つまり、なにか。ここは俺達の居た時代より千は前の時代で、天子とやらは我らが皇帝陛下よりも前に、この大陸を支配していたと」
「ええ。聞いてみた限り、歴史と同じですからそうなりますね」
「しかし、なんでそんな昔に来てしまったんだ?」
「さて、私如きの乏しい知識じゃさっぱりですけど――やはり、あの場所が原因でしょうね」
「あの真っ暗な所か。ふうむ」
七夜はひとしきり眉をよせて考え込んだが、ややして頭を振りながら言った。
「ああ、やめだやめだ。考えたところでどうにもならん。――それより、お前さんだ」
七夜はまだ泣いている女の魂魄を見た。こうしてる間にも女はどんどんと薄れていき、今にも消えてしまいそうだ。
「どうしたい。俺が出来ることなら手を貸すぞ」
女は顔を覆っていた手を外し、涙に濡れた眼差しを七夜に向けた。七夜をつくづくと眺めた女は、己の肉体と、その身に抱える物を示した。
「貴方様から強い魂の力を感じます。わたくしの身体を使い、どうか、この宝冠を霊山の社へと届けて頂けないでしょうか」
地面に指をつき、深々と頭を下げての懇願に、七夜はしっかりと頷いた。
「あいわかった。ここでこうして出会ったのも縁だろう。我が一族の誇りにかけて、その願いを叶えよう」
「有難うございます……」
安堵の思いが最後の力を失わせたのか、女は月明かりに溶けるかのように消え去った。
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