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「私、すぐニキビできちゃうんだぁ」って続ける河野さんに「そうなんだ」と相槌を打ったところで、乱入者があった。槙田くんだ。私の好きな人。きっと、たぶん、ううんぜったい。九十九パーセントの確率で河野さんと付き合うんだけどね。
「河野、また一年よろしくっ。佐伯もよろしくなー」
さっぱりとした笑顔が私にも向けられる。たまたま河野さんと一緒にいただけの私にまで気を回してくれるなんて、やっぱり優しいね。でも、私があなたを好きだってことを知らないからだろうな。
河野さんと槙田くんは、春休みの間の話で盛り上がり始めた。河野さんが、弓道の大会に出場した槙田くんを応援に行ったみたいだ。私はそっとフェードアウトして、筆箱を無意味にいじる。
え? 何で? ほんとに何で?
始業式の翌日、昼休み。うちで使っている洗顔の銘柄を河野さんに教えたところまではよかった。でも今、化粧品の話題が飛び交うなんかキラキラしたグループで、私は愛想笑いを浮かべながらお弁当をつついている。「去年仲良かった子がみんな、クラス離れちゃったからぼっちだったんだよね。だから入れてもらうの」って、そりゃ、あなたはそれでいいかもしれないけど。「佐伯さんもぼっち? じゃあ一緒に食べようよ」ってなるの、おかしいでしょ。だってほら、化粧品の話題からドラマの話題に切り替わったけど、それにもついていけないよ。「大河ドラマにも出るって。上杉謙信だったかな? 結構メインな役だよ」って名前が挙がったイケメン俳優より、上杉謙信のほうがよっぽどなじみ深い。まぁ、某歴史系アクションゲームの知識だけど。
「佐伯さんは何か見てる?」
隣りに座っている河野さんが私に話を振ってくれたのは、たぶん気を遣われたからだ。でも話を振られたところでドラマなんて一切見てないから、「ドラマはあんまり見なくて」って返事をしてまた愛想笑いをするしかない。それでも「じゃあどんなテレビ見る?」って質問を重ねてくれるの、気を遣われすぎていて居たたまれない。
「あはは、オタクだからアニメとか……」
こういうときは先回りした方がダメージが少ない。このグループの子たちはアニメなんてオタクな趣味には興味はないはずだから、それで話が終わると思った。ところが予想はあっさりと外れる。
「えー、何のアニメ?」
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