第一章 第一話

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第一章 第一話

「あの、『陰キャ』って何ですか?」  僕がそう質問すると、文芸部のみんなが、一斉に顔を上げた。みんな目を丸くしている。  ああ、またやってしまったと思った。  今は文芸部の部活中だ。部員が書いた小説を読み合って作者に質問や感想を言っているところだった。  僕はわからない言葉があると質問するのだけれど、それに対するみんなの反応は、「君はそんなことも知らないの?」だ。  現代の高校生にもかかわらず、僕はスマホを持っていない。理由を説明すると長くなるから省略するが、とにかくスマホを持っていない。パソコンは家にあるが家族共用で僕はほとんど使わない。そしてなんとかスイッチとかなんとかステーション等のゲーム機も持っていない。要するにインターネットとほとんど関わりがない。そのため、インターネット上でよく使われる言葉はほとんど知らなかった。  僕は小難しい小説はわりと読んでいたから、熟語の意味がわからないということはほぼない。今まで文芸部の部誌で見てわからなかった言葉はどれもインターネット上でよく使われる言葉であった。
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