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で、仲間は、もう犯人を捕まえてる。
事件を隠し撮りしていた痩せた男を捕まえて、「ぶっ殺すぞ! てめえ!」と、荒ぶっていた。
どうもゴンタロウさんが不自然な位置からのカメラが稼働している音を聞いていたようなんだ。
ゴンタロウさんは怪物をやっつけたあと、しきりに二見三佐のお嬢さんを気にかけているようだった。
お嬢さんは体調を崩したのか、教会の階段の隅でしゃがみこんでいた。
三佐はしきりに「大丈夫か?」と、訊いていたが、お嬢さんは縦に首を振っていた……。
このところ、いつものこれだ。
三佐の采配はいつも的確で、必ず犯人が隠れている場所を逃がさないし、犯人の手口が予想範囲を超えたことはこれまで一度もない。
みんな想定の範囲内で終息している。
これは特殊部隊にいる全員が知っていることだが、三佐のお嬢さんは未来を予知する超能力があるようで、特殊犯罪の手口をすべて見抜いてしまうそうなんだ。
しかし、このところ、お嬢さんの体調は悪く、能力を使うたびに激しい頭痛が襲うそうだ。
だから――お嬢さんが出動することが以前より減っている。
それにつれて部隊の任務の成功率も低くなっているが、これは隊員の個人個人の奮闘でカバーするしかない。
いつまでも高校生に甘えてばかりいられないしな。
すぐ尋問で、犯人の実名は判明した。
本名は菜(な)畠(ばたけ)孝(たか)信(のぶ)、関西のK大学農学部の助手で農作物の遺伝子研究をしていたが、こっそり襲撃用に、ブーケに偽造した怪物を育成していたという。(ショック・ブーツって人の幸せを踏みにじるからじゃないのかよ、そのまんま植物を凶器に使うからショックブーツって、なんてセンスがないネーミングなんだ!)
動機は嫉妬。
「自分はファンだから彼女を傷つけたくなかったが、その知人の女性を傷つけることで、一生結婚に負い目を感じてほしかった」だった。
なんの関係もない新婦の友人を狙うなんて、なんて陰湿なやつなんだ! 吐き気がする!
しかし三佐のお嬢さんには申し訳ない。
初対面から、ずっと仏頂面しか知らないから、(まるで怒ったフグみたいだ)なんて思っていた自分が恥ずかしい。
ごめんなさい。犯人を捕らえようと懸命に協力してくれたんだね。ありがとう。
三十分ほど休んでお嬢さんの体調は回復したようだ。
普通に歩けるようになったものの、顔色はまだ蒼い。
おれの花嫁は感激して、お嬢さんと何枚も写真を撮り、ちゃっかり何枚も差し出された色紙にサインしたのは言うまでもない。
体調のせいもあるだろうが、なぜか写真の決め顔まで仏頂面だった。
あきらかにわざとだ。
最近の流行なのか?
でも、サインをもらったあと、彼女は初めてにっこりと笑顔で、「おめでとうございます」と、祝福してくれた。
笑顔はかわいいんだよな。
了
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