義弟ダニエルの手紙

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義弟ダニエルの手紙

 姉上さま、ご機嫌いかがですか。  視察と称して、フィアルーカ領に引きこもり、レオン・フィアルーカ次期侯爵様を独り占めして、さぞやご満足でしょうね。  あの、ハレンチ元王太子の流刑地……おっと、領地が決まりました。北の果ての辺境ジブリードだったよ、予想通りかな。寂れた鉱山とやせた土地が八割占める、なかなか厳しい環境だね。陛下も思い切ったことをするよ。こっから這い上がってみろって感じなのかな。いや、最大派閥のロックヒューストン公爵家に対する配慮だね、きっと。  僕は絶対、ニルリナ嬢一人を大事にして、ぬくぬくと広大で豊かな公爵領を守っていくよ。    姉上が王妃教育で忙しくて動けない時に、僕が代わりに暗躍したこともちゃんと義兄(にい)さまに話してね。僕はもっと義兄さまに褒められたいからさ。二ルリナ嬢も喜んで協力してくれて、一緒にいる時間が増えたのは嬉しかったな。  だから、もし未来の僕たちの子供が、意に沿わない政略結婚に巻き込まれたら、ちゃんと協力してね。  家の者はみんな姉上の片思いの成就を、今でも嬉しそうに話すよ。  あんなにがっちり外堀を埋めたのに、まさか姉上が勝っちゃって。侍女長は膝から崩れ落ちるし、模擬剣を用意した下男は、「寿命が縮まりましたーっ」て泣いちゃって大変だったよねぇ。  まあ、姉上らしいということなのかな。一緒に稽古してた時に「詰めが甘い」って先生に言われてたのを思い出したよ。  僕の株も上がって、いつも以上に居心地は良いし、あの見合い(決闘)を隠れて見ていた父上も母上も、こっちが恥ずかしくなるくらい、今もイチャイチャしてるよ。姉上たちの影響だと僕は思っているんだ。  そう言えば、父上のあの時の咳払い。なんであんなに響いたんだろうね。  最初は僕の従者だったのに、姉上に取られて、父上にまで取られて……姉上は取り返したね。  義兄さまは領地経営も難なくこなすと思うよ。あの父上が直接指導したんだからさ。  一時期、僕は本当に父上がレオンを養子にして公爵家を継がせんるんじゃないかと思って、冷や冷やしたんだよ。  でも、義兄になってくれたから、これからもいろいろ相談出来るし、僕の将来も安泰だ。  実は、こうなることも予想してたんじゃないかな、あの狸親父は。  義兄さまはモテるからね、あんまり我儘を言っては駄目だよ。  あの大女優の忘れ形見というのは、一部では有名な話らしいからね。  初恋を実らせるなんて、さすが僕の姉上だ。  追伸:  第二王子の立太子式典までには王都に戻ってくるようにって、父上からの伝言、必ず守ってよね。
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