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やがて島は開発され、レジャー施設やリゾートホテルが島中に建てられることになった。
大人達は大いに喜んでいる。
経済が回るだの、過疎化が止まるだの、なんだか難しい話をしていた。
僕が色々と手伝った時よりも、何倍も喜んでいるように思えて、少し複雑な気持ちにはなる。それでも喜んでいる皆を見ていると、僕も嬉しい。何か僕にも出来ることはないかと、考えていた。
少しすると、大人達は神妙な顔で僕に会いに来た。難しい顔をして一向に話を切り出さないので、僕からそれとなく尋ねると、僕の住処の洞窟を取り崩し、その上にホテルを建てたいのだと言う。
皆、僕に出ていって欲しいようだった。
僕はもう、邪魔らしい。
僕を見世物として水族館を作る案もあったと聞いた。
でも、一部の大人が猛烈に反対し、計画は頓挫したらしい。話を聞くと、昔よく遊んでいた子供達が反対してくれたようだ。
それが僕にとって良いことなのかどうかはわからなかったけど、皆、僕が出ていくことを望んでいる。
それで皆が喜んでくれるならと、僕は島を出ていくことを大人達へ告げた。
皆、ごめんねと、しきりに謝っている。
何度も何度も謝っていた。
でも、僕はその時の皆の顔を絶対に忘れない。
どうして僕は、あんなにも醜い顔をする生き物に、なりたいと願っていたんだろう。
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