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たくさん雨が降ってきた。
雨の音が情報を遮る。
足早に去っていく子供達の姿も、もう見えない。
浜辺に立ち並ぶ無機質な岩の光沢だけが、白い視界の中で不確かに浮かんでいる。
僕は1人で雨に濡れながら、貝を探して食べて、寝床にしている海岸沿いの浅い洞窟に戻った。
雨宿りだろうか。洞窟の入口付近で小鳥が1羽、羽根を休めている。鳥も、雨が降ると悲しくなるのだろうか。雨に濡れると飛べないのであれば、きっとそうなのかもしれない。僕は鳥の気持ちなんてわからないが、もしそうであるなら、濡れてもいい体に生まれてこなかったことは、悲しいことなのかもしれないと、僕は思った。
雨音が洞窟の岩壁を強く叩く。残響が耳を弾き、頭が鈍る。
所在無い時間。
激しい雑音が流れていく。
どうして、誰も僕に傘を差し伸べてはくれないのだろう。
僕が、濡れても平気だから、誰も助けてはくれないのだろうか。
ふと、虚しさが込み上げてきた。
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