夢の中で

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「おやすみ」  僕の大好きな時間がやってきた。  僕は学校ではクールにあまり騒がす寡黙な男子で通っていると思うが  実は、もろ中二病のメルヘンチックな男。  ピーターパンのように空を飛びたいと思っているし、シンデレラ姫に会って恋をしたいと思っている。  現実には無理な話なのだが、眠って夢の中に入ると僕の願いがすべてかなう。  空だって飛べるし、お姫様にだって会える。戦いが始まれば僕は勇者だ。  さて、今日はどんな夢なのだろうか  唯一の難点は夢を選べないというところなんだけど、まあいいや。 「おやすみ」 「おや、ここはどこだろう。学校の裏庭だ」  夢を見ている時は現実だと思っている。  だから無理なことはせず、現実の時と同じように判断し行動する。  でも「これは夢だ」と気がついたときは、超ラッキー!!  僕の冒険が始まる。  手始めに、空を飛んでみるか 「よいしょ、よいしょ」  なぜか空を飛ぶときはいつも平泳ぎのカエル足なんだ。  しかも夢なのに非常に疲れる。  でも上空まで来ると、スーパーマンのように手を広げて滑空できる。  風が頬をなぜ上空高く舞い上がる。 「超気持ちいい」  下を見るとクラス1のイケメン君が、同じくクラス1の美女を連れて歩いている。  僕もその子の事が好きなんだ。とても言えないが今は夢の中。  僕はヒラリと二人の前に舞い降りて言った。 「へい彼女。僕と空の旅をしないかい」  僕は彼女の手をとり空にフワリと舞い上がる。 「何をする」  イケメン君が何か騒いでいるが、僕たちは空の上。 「うわー素敵」  彼女が感嘆の声をあげる。  僕は足がカエル足なので、ハァハァして彼女に気の利いたセリフが出ない。 「プッ」彼女が僕の平泳ぎのカエル足を見て笑う。 「もうちょっとカッコよく飛べないの?」  何か言い返したいが、二人分の浮力を出すのに必死。  僕たちの高度は徐々に下がっていき、イケメン君の手が僕の足首を掴んだ。 「うわー!もうダメだ」  僕は力尽きてとうとう地面に足が着いてしまった。もう飛べない。  彼女のガッカリした顔を見た時に目が覚めた。  もう少しハッピーエンドにしろよな  僕は自分の頭をポカリと叩いた。  学校に行くと廊下でイケメン君と彼女が並んで歩いている。  僕はクールに通り過ぎた。 「さて、今夜はどういう夢にしようかな」
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