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クルーズ船…あとがき
9月の連休に前作と合わせて書いた話です。前作の初稿を終えたあとすぐに取りかかりました。
短いものは1つ1つ仕上げるより並行して書く方がよかったりします。まるで別タイプの話を同時進行すると気分が変わり、コダワリもいい具合に抜けたりします。
前作は全編独白でしたが、本作はドキュメンタリータッチ。
前半は顛末のモンタージュです。本当はもっといろいろ詰め込みたかったのですが、最低限でいいと割り切りました。別の切り取り方をすればまた違った話ができるでしょう。真逆の話だって書けるかもしれません。そういうのを今後書いてみると、お互いに比べられていいかもしれませんね。
ダイヤモンド・プリンセス号の騒動時にその対応のまずさを批判するSNSの投稿などを見ましたが、批判の矛先がほぼ政府に向いてるのに違和感がありました。
もちろん政府対応の甘さ遅さは批判されるべきですが、対応の杜撰さを現場で実際目にした人が大勢いたはずです。その人たちに責任はないのか。日々身を粉にして支援に当たったとしてもです。それとこれとは別問題。
そこから本作の主人公を考えました。告発すべき時にしなかった医師。できずに自ら職を辞した元医師。
平時には場の空気を読んで遠慮したりが美徳だったりしますが、平時と非常時ではすべきことが逆になりがちです。生き死ににかかわるとき遠慮はむしろいけない。その切り替えができず、空気を読んで周囲に流され、自ら責任を取ることを大勢の人が避けた結果、日本は先の戦争に至ったんじゃないか。大きな犠牲を出したんじゃないか。
これは「物語論あれこれ」というエッセイで、映画「この世界の片隅に」を題材にして書いた章でも展開した考えです。エッセイを書くことでモヤモヤしたものがクリアになり、そこから物語になった1つでした。
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【クルーズ船】を収録した電子書籍は7月3日に発売しました。HPから購入できます。作者の自己紹介、または「あらすじ」の下部からお進み下さい。
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