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いやいや、有り得ないだろう
「先生、さようなら。」
「おう。気を付けて帰れよ。」
俺は、市内の高校の英語教師だ。
名前は松本幸輝。歳は28歳。
もうすぐ30歳になると言うのに、結婚の予定はない。
もちろん、彼女もいない。
生徒にとりわけ人気がある訳でもなく、同僚の教師たちに慕われているかと言えば、そうでもない。
大学への進学率が高くもないこの高校で、英語を真面目に勉強しようとしている生徒も少ない。
言っちゃあ悪いが、地味でしがないのが、今の俺だ。
そんな中、俺の目の前に現れたのは、ちょっと背の高い、黒髪のロング。
クールと言うか、何を考えているか分からない工藤葵だ。
「工藤、今帰りか。」
話しかけたのに、ふいと顔を背ける工藤。
おい、人が話しかけてんのに、無視するなよな。
「なんだ、違うのか。」
「話しかけないで。」
なんだ、それ。
俺、嫌われてるのかよ。
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