58人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前さあ…………偽装結婚なんかしてどうすんの? ほかに言うこと、あるだろ?」
「………………」
そんな目で見てもダメだ。
お前がちゃんと言うまで、今日の俺は甘やかさないからな。
お前と結婚したがっている女の子が大勢いるのは知ってる。
それをお前が全部断ってるのも知ってる。
ふとした瞬間、不意に熱を帯びた視線を感じることも……気のせいだと自分に言い聞かせることは既に諦めた。
「なあ…………今なら聞いてやるからさ」
やっぱり甘やかし過ぎたか、と思いつつも、真っ直ぐ目を見て言ってやる。
「………………好きだから」
「うん」
「きみが好きだから。結婚さえすれば僕のものになると思ったけど……女の子とは、遊ばないで」
「うん」
よく言えました、なんて、心の中で呟いて、俺より少し高い位置にある頭を軽く撫でてやる。
どうしてこんなやつが可愛く見えるのかは俺にもわからないが、きっと俺の口元は緩んでる。
俺には恋心なんてものはよくわからないけど、こいつのことが大切なのは間違いないから。
こいつの気持ちに気付いて以来、散々悩んで考えてはみたものの、愛ならあるし、受け入れる覚悟はもうしてる。
「いいよ。俺が浮気しないように、精々がんばって俺のこと落としてよ」
「…………!! うん! 大好き……!!」
言うが早いか、ものすごい馬鹿力でぎゅうぎゅうと抱きしめられた。
ちょっと息が苦しいけど、体温を感じて心まで温かくなって心地良い。
ああ、なんだ、俺はもう既に落とされかかってる。
絶対言ってやらないけど、もう少しこのままでいたい気がして……背中に腕を回してぎゅっとした。
最初のコメントを投稿しよう!