夢か現か

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* * * *  眠りについたはずなのに、夢の中でも自分の部屋にいる。今日はぼやけていない。  でも今は床に座っており、服もあの日のものだった。ということは、あの夜の記憶なのかしら。  そして目の前のキッチンに一人の男性が立って、かちゃかちゃと音を立てながら洗い物をしているのである。  話しかけたいのに口が開かない。  夏実に向けるその背中は細く見えるのに、黒のシャツの袖からは筋肉質な腕が見える。短くカットされた黒髪は清潔感が感じられた。  ん? あの首元のホクロって……。  そう思った時に、あたりが急に暗くなり、夏実の体は男性に抱えられ宙に浮く。そして驚く間もなくベッドに寝かされる。  男性の手が夏実の頭を撫でる。 「おやすみなさい、夏実さん。また……で会いましょうね」  何も見えないのがもどかしい。夏実は再び眩い光に包まれた……。
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