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「好きだよ、夏実さん」
「……でも私、不倫してたような女だよ。まだ別れたばかりだし……」
「だって不可抗力じゃん。しかもちゃんと別れてるし。……悪いけど、俺は弱ってる夏実さんに付け込む気満々だから」
聡太は不敵な笑みを浮かべる。
「この間は何もしないで帰ったけど、今日はどうしようかな」
まるで夏実の出方を待っているかのような話し方だった。
私なんでこんなにドキドキしてるの?
「……結婚してないよね?」
「してないよ」
「彼女は? 二股とか嫌なんだけど」
「いないって。用心深いなぁ」
「だって……騙されたばっかりだし」
「質問はそれだけ? じゃあそろそろ返事が欲しいんだけど」
聡太の指が夏実の頬を撫で、再びキスされる。
「返事してからキスじゃないの……?」
そんなことはお構いなしのようだ。甘ったるいほどのキスに酔いそうだった。
「……抵抗しないってことは、返事はイエスでいいんだよね?」
「うん……」
あの日の夢のように抱き上げられると、ベッドに寝かされる。
「明日仕事だよ……?」
「俺、明日夜勤だから夜は一緒にいられないんだ。あの日はおやすみだけ言って部屋を出たけど、今日はおやすみからおはようまで言うつもりだから、覚悟しててね」
「朝まで……? なんかいいね、ずっと一緒って素敵……」
最近はおやすみが別れの挨拶だった。でもちゃんとおやすみが言えるんだ……たったそれだけのことが、こんなに幸せだなんて。
「ん? なんかオレンジの匂いがする」
聡太の言葉で、昨夜のおまじないのことを思い出す。あの時はまさかこんな展開になるなんて思わなかった。
「オレンジって夏実さんのイメージかも」
「そうかな……でも好きな香りではあるかな」
「元気でパワーをもらえる感じ?」
でも今は私の方がパワーをもらえてる気がするの。
聡太と繋がると、この上なく満たされた。
「好きだよ……。きっと夏実さんはまだそこまで俺を好きじゃないかもしれないけど、いいんだ。これからもっと好きにさせるから。俺を大好きって言わせてやる」
聡太くんはそう言うけど、もうかなり愛おしくてたまらなくなってる。
その声も、名前の呼び方も、このホクロもかわいくて仕方がないの。
二人は果てた後、布団の中で見つめ合って笑い合う。
「明日も仕事だし、寝よっか?」
夏実は頷くと、聡太にキスをする。
「もう好きになってるからね」
「でも俺の好きの方が上だし」
あなたを見つけられて良かった。こんなに幸せな気持ちになる。
「おやすみ……」
「うん、おやすみなさい」
明日の朝へと繋がる言葉を伝え合い、夏実はゆっくり眠りに落ちていく……。
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