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夢か現か
久々に地獄のような一日だった。
ずっと続くかと思われた不倫に終止符を打ち、やけ酒を飲んで記憶をなくし、気がついたらベッドの中にいた。
なんて最悪な朝だろう。
とりあえず起き上がり、自分の服を見る。着ていたカーディガンが見当たらなかったが、それ以外は昨日のままだ。体に違和感もない。
部屋を見渡すと、明らかにおかしな点が見つかる。
テーブルの上に、二日酔いのためのドリンク、まるでお店のようにキレイに畳まれたカーディガンが置いてある。そしてポストに落とされている鍵。
もはやこの部屋に誰かが入ったことは明白だった。
私あんなに酔ってたのに、きちんと住所を言えたってこと?
男か女かもわからないが、部屋の様子からすれば、きっと親切で送ってくれたのだろう。
ガンガン響く頭を押さえて、ありがたくドリンクをいただく。
その時にカーディガンの下に挟まれたメモ用紙に気がついた。そっと引っ張り出してみると、男性の力強い筆圧で一言だけ書かれていた。
『お大事にしてください』
誰だろう? どんな人だろう?
新しい恋ならいいのにと思いつつ、しばらく色恋沙汰は避けたい自分もいる。
夏実は再び布団に潜り込むと、そのメモを握りしめたまま眠りについた。
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