おりひめとオリヒメ

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 冷たい手汗が、鉄の粉と混じった。  もう間もなく限界がくる。震える両腕に、さらに力を込めた。  もう少し我慢、もう少し我慢。  力を入れるごとに、じんわりと滑り落ちてゆく。  少女よ、私のことはあきらめてくれ。 しかしなんということだろう。彼女は両手と両足を不器用に使い、上へこようとしているではないか。右手、左手、両足。少しずつのようで、早い。  私は限界の身体でもう少し耐えた。  彼女が上にきたら、すぐさま下りよう。きっと彼女は降りられない。  彼女が私の足元くらいの高さまで上ってきた。私はゆっくり下り始めた。本当は、今すぐ手足を放して落っこちたかった。しかし、やはり落ちるのは怖い。  なるべく下を見ないように、大急ぎで下りた。最後は飛び降りた。衝撃で手が地面に触れる。  ふわりと暖かい地面。  私は上り棒を見上げた。そして恐怖で頭が真っ白になった。  彼女が故意に落下したのだ。  とん、と湿気を含んだ土が鳴ると、彼女は両手を広げ 、通せんぼするように上り棒を掴んだ。真夏の太陽の笑顔で。 私は素早く彼女と上り棒をよけ、今度はジャングルジムに駆け上った。必死だった。背中に彼女の笑顔がヒリヒリと刺さる  下半分が水色で、上半分が黄色のかわいいジャングルジム。私は黄色に差し掛かるところまで上り、ジャングルジムの中心部へと潜っていった。  中心あたりにきたところで、振り返った。彼女の笑顔は変わっていない。  カンカンカン、と彼女の上ってくる音が脳内に響いてくる。  さぁどこへ逃げよう。上か、下か それともジャングルジムを抜けて別のところへ行くか。  彼女が黄色のパイプに手をかけた。私のいるところまで来るのに、あと20秒もかからないだろう。
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