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彼女の名前はミユキちゃんとか、ユウナちゃんとか、そんな感じの流行りの名前だった。ユキナちゃんだったかもしれない。
とにかく、私は十数年前に彼女と出会っている 。彼女は私よりも少し背が高かったが歳は1つ下だった。
出会ったのは、私が小学校1年生の7月7日。神奈川県のとある七夕祭りの夕暮れ時だった。
私は褪せたオレンジの空と群青の海の境を眺めていた。淀みなく進む高速道路が心地よい。あと新品くさいクーラーも。
ふと、一番星が現れているのに気づいた。波の光を反射しているかのように煌めいている。
「星の光がきらきら動くのは 星と見ている人の間にある空気が揺れているからだ」 という話は聞いたことがある。
誰が言っていたのだったか。
私は一番星に目を凝らした。
私と星との間の空気が揺れている。
しかし、実感はない。
それよりも、「今見ている星の光は、何年も前の光」という話の方が、なんだか好きだ。
きっとこの話も、先ほどと同じ人 物から聞いたのだろう。
私は今宵の一番星を目に焼きつけようとした。黒い夜空に輝く星ももちろんきれいだが、まだ明るいうちに出る星を見るのはなんだか得をした気分になる。
夜は長い。ゆえに、夕方の星はちょっぴりレアな気がするのだ。それに、美しい。
「ねぇ、一番星が見えるよ!」と両親に教えようとして、やめた。
車が左に曲がり、 ブレーキがかかる。高速道路から出るのだ。
私は座席越しに、もういちど1番星を見た。他にまだ、星は出ていない。
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