しょっぱい おてがみ

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 あれから、時々まこと君がうちに来る。    どうやらフミさんが、まこと君が学童から帰ってきたところを捕まえて、お母さんの帰宅が遅い時には家に来てもいいよ、と話をしたらしい。ダイニングで宿題をみてやったり、俺が昔やっていたビデオゲームを引っ張り出して一緒に遊んでいたりする。  夕飯時には田辺さんが迎えに来るので、フミさんが人間と同じ食事を食べないことは、まだ知られていないようだ。    まこと君と接している所為なんだろうか。  ここんとこ、フミさんの表情が豊かになってきたような気がする。  表情の乏しい親父と10年近くも付き合ってきたから、つっけんどんで横柄な印象だっただけなんだ。そもそも、食べた文章であれだけ影響を受けるフミさんだ。まだ、アイデンティティが確立していないのかもしれない。  ある日、遊びに来たまこと君が、キラキラした笑顔でこう言った。 「あのね。明日、父ちゃんが帰ってくるんだって! しばらく家に居られるんだって!」 「それはよかったねぇ」    俺とフミさんは手放しで安堵した。  翌日の土曜日、まこと君は、笑顔のやさしい男性を連れて家に来た。  呉土産の「潜れ! ぼくらの潜水艦ケーキ」を持って。 「ねぇ、フミさん」 「はい? なんでしょう」  フミさんが煎れてくれた紅茶をお供に、お土産のレモン風味「潜水艦ケーキ」を食べながら、俺はポツリとつぶやいた。 「ここに戻って来て、よかったなぁ」 「そうですか」 「うん」 「そう思っていただけたのなら、良かったです。このパッケージ、カワイイ。食べるのが勿体ないですね」  フミさんは潜水艦ケーキの潜水艦型外箱パッケージをきれいに組みなおすと、ダイニングテーブルの真ん中に置いて、幸せそうに微笑んだ。                     < 終わり >  
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