死に近づく者

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その人は何も言わずにジッと俺の瞳を見つめる。そして屈み込んで俺と視線の高さを合わせる。 「!?」  何だか緊張する。その瞳は自分が映り込みとても不思議な感じだ。 「…多額の借金…。人間関係の不備。…。」 「え?」 その人はボソボソとつぶやく様に言う。すると何か用事が済んだのかスッと立ちあがった。 「…やはりあなたはまだ黄泉へ来るのは早いようです。どうぞ、この世界に残りなさい。」 「えっ?黄泉って!?」  俺の質問に答えることなく彼は去っていく。 「…あの!?あなたは?」  俺は後ろ姿になるべく大きな声で尋ねた。すると一度足を止めてゆっくりと、振り返った。 「私は…黄泉の防人でございます。」 「防人?」  「では…。」 彼はそのまま去っていってしまった。
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