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死に近づく者
「…この森なら…誰にもバレないよな。」
俺は黄昏時に森に入った。誰の土地なのかも分からないほど荒れたこの山の中ならきっと誰にもバレない。
俺は自分で作った黄泉への道へ首を通した。
一瞬で首を締め上げられる。あとは自重に任せればそのまま俺の人生は終わり
のはずだった。
しかし俺の作った黄泉の入り口は、木に縛り付けた紐が緩み途絶えてしまった。
どしんと尻もちをついて仰向けに倒れる。
「痛って…ちくしょう…死ぬの事も出来ないのかよ。」
俺は一人ぼやいていて上半身を起こす。
すると俺の目の前には一人の髪の長い人が。
「わっ!?誰?」
こんな山奥に人など。しかもしっかりと着物を着ている。薄暗い時間なのにはっきりと艶が解るほどの真っ直ぐな艶髪。何より何もかもを吸い込み見通して来るような瞳。
「…あの…どなたですか?」
俺は思わず尋ねるがその人は黙って俺の目の前に来た。
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