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記事は生徒が発見された時間と死亡時刻から始まって、イジメの有無を調査していると言う短い文で完結していた。
どうでもいい。が、氷雨がその元凶となるのなら話は別だ。
「よけい興味が湧いて来たかな」
立ち上がる。二階の廊下に軽く手を振ると、通り過ぎていく氷雨がこちらを向いた。若の溜め息が重なる。
「だからお前はピエロなんだよ。タフガイのふりもヘタクソなまんまだ」
「その僕でも人の死は堪えるのに、あの一年生はもう笑ってるんだ。気になるじゃないか」
僕は答えなかった。平気だと言ってもどうせ聞いちゃいない。
全力で僕らに手を振る氷雨を指さして、若が浅く笑う。
「だったら残念だな。アレ、どこに手ぇ振ってると思う?」
「ご指名だろ、僕に」
「頭湧いたかピエロ。ありゃ俺に振ってんだ」
「ままごとクン……、現実ぐらい見なよ。目が合ってるのは僕だ」
アイドルと言うよりは、檻の中の珍獣を見てるような気分だ。
僕らはそこそこにいがみ合ってから、結局並んで控えめに手を振る。
「僕ら指さして笑ってるな。爆笑だ」
「なに笑とんねん」
コントにも成りきれないような気の抜けた言葉の応酬。
指をさして笑っていた氷雨が、思い出したように階段に向けて走っていく。
面倒事の予感がした。
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