臆病な片思い

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「違うって! 私だって、男の人を好きになる事だって……ある」 氷室社長が浮かんで、慌てて頭からかき消した。 「今、誰の事、思い浮かべたの? 顔真っ赤だよ。実は美羽って純情なんだよね。そういう所大好き」 彩香に抱きつかれた。 「ちょっと、彩香」 「美羽を男なんかに渡さないわ」 すっかりお酒が回った彩香が強く、私を抱きしめる。 女性なんだなと思う柔らかさと髪から漂う甘い香りを感じる。彩香は可愛らしい。私にも彩香のような可愛らしさあるのかな? 抱き着いた彩香の栗色の頭をよしよしと撫でていると、スマホが鳴る。 ディスプレイには氷室社長の文字。 社長からの呼び出しにはすぐに対応しなければいけない。 「はい。浅川です」 「氷室だ。悪いが仕事を頼みたい」 今から仕事? もう八時なのに。 今夜は何もないって言ってたじゃない。お酒飲んじゃったよ、私。 「あの、少しお酒を飲んでいますが、大丈夫でしょうか?」 「大丈夫。いてくれるだけでいい仕事だ」 どんな仕事? マネキンにでもなれと? 「わかりました。どちらに伺えばよろしいでしょうか?」 スマホを切ると、彩香が「えー」とむくれた。
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