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晃一は世田谷という街が好きだ。
学芸大学駅から徒歩5分のロフト付きのアパルトマンに住んでもう7年。
すっかり四国弁も抜けて、生まれたときから世田谷に住んでいるように馴染んでいる。
不思議な街だ、世田谷は。
いわゆる都会的喧噪など一切なく、鳩たちのくるっぽーという鳴き声で目が覚める落ち着いた街、背の高い建物が視界を遮ることもない。
商店街はセンスのいい店と居心地のいい人情味のある店が並び、どちらもとても活気がある。
静かで居心地のいい、おしゃれな住宅地。それでいてどこへ出るにも便利がいいし、家賃さえ高くなければ最高だと思う。
その唯一の悩みの種だった家賃も、彼女との同棲が始まって家賃を折半するようになったので、問題解決済みだ。
晃一はイタリア料理店でシェフとして働いている。
新潟から出てきた彼女のくるみはアパレルショップで販売員をしている。
こんなに素敵なカップルがいるだろうかと晃一は思っている。
くるみが来てから、晃一の部屋は変わった。(同棲しているのだから、もうふたりの部屋だけど)。
北欧のデザイン家具、食器、リネン、キャンバスに印刷され、壁に飾られたデザインアート。カラフルで、スタイリッシュでかわいらしい。
服飾に憧れ、センスを磨いてきたくるみらしい、洒落た部屋になった。
晃一の服装もくるみが一緒に選んでくれるので、すっかりあか抜けたものに変わった。
もはや四国の匂いも新潟の匂いもどこにもない。
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