蜜柑

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「あ、お蜜柑」  くるみは言うのだ。こたつで食べる蜜柑は最高だと。 最近日暮れが早くなって、メランコリックな気分になって、新潟の田舎を恋しく思っていたところだったのだと。 「晃ちゃん、年末どうするのかな、ってちょっと思ってたんだ。飲食店だから休みとか取れないのかなって。だったら私はどうしたらいいのかなって、正直に言えばね」  晃一は勇気を出して言ってみた。 「くるみ。この家にこたつ、買ってもいい?」  くるみは弾けそうな笑顔で、首を二回縦に振った。晃一はなんだか無理して肩ひじ張っていた自分に気が付いた。 「こたつに蜜柑、やっぱり最高だよな」  そんなわけで、次の休みを合わせて、こたつと下に敷くラグと、蜜柑を入れるざるを買いに行くことにしたのだ。 ≪了≫
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加